熱水噴出孔、つまり深海底で熱水が噴き出す場所(=海底火山の噴火口)は、本作品の肝にあたる重要なキーワードだ。深海では、この熱水噴出孔が、地表や浅い海で生命を支える「太陽」に代わる生命システムの中心だからである。
大戦後、間もない1946年、紅海で水温が高い場所が見つかり、有機物による温度上昇の可能性がなかったことから、海底火山の存在が推定されていた。アルビン号の功績として真っ先に挙げられるのは、海底の熱水噴出孔の目視確認(=発見)だろう。
1977年、アルビン号は、海底地質学者を乗せ、東太平洋のガラパゴス海嶺(かいれい=海底山脈)で海底の水温を調査していたところ、深海底で熱水が噴き出す場所を目視で確認した。アポロ11号の月着陸が1969年、それから実に8年も経っていた。人類の目は、古代から宇宙に注がれていたが、足元の海、とりわけ深海の探査はそれほど進んでいなかった証しですね。
アルビン号が水深2500mのガラパゴス海嶺(Lift)のさけ目(Rift)で見つけた熱水噴出孔は、2年前から同深海で存在の可能性が指摘されていた。「熱水」と言っても、温度は17度。高温では無かったが、明らかにまわりの水温より十数度高かった。その2年後、メキシコ沖で本映画の現場近く(かなり離れているが)の海域、水深2600mで、水温380度という熱水噴出孔を見つけた。380度というと、沸点をはるかに超えている。深海の猛烈な水圧が、沸点を上げているのだ。


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